宇佐見蓮子は星が怖い ルーミアは闇が怖い 豊聡耳神子は聲が怖い ドレミー・スイートは夢が怖い 東風谷早苗は神が怖い

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「閉ざされた楽園は

少女たちの絶望によって開かれる」

 見知った夜空に唾吐かれる星見。
 揺り籠の安寧を失った闇の形。
 民の聲に疑心を生む為政者。
 夢の世界に翻弄される獏。
 その座から追われた現人神。
 本来であれば彼女たちが恐怖することはなかったソレ。
 だが、己の有り様ですらあったソレに裏切られたときにこそ、人はソレを「最も恐ろしい」と感じるのだ――。
 少女たちの抱く「最も恐ろしいもの」に着目した各巻完結型・幻想少女恐怖シリーズ総集編第三弾。

  • 初版:博麗神社例大祭16 ぬ01ab
  • 頒布価格:2000円
  • 装丁
    • 文庫684P
    • 内カラー口絵6枚(各巻表紙絵)
  • 収録
    • 宇佐見蓮子は星が怖い
    • ルーミアは闇が怖い
    • 豊聡耳神子は聲が怖い
    • ドレミー・スイートは夢が怖い
    • 東風谷早苗は神が怖い
    • あるいは某かの観測(書き下ろし52P)
  • 本文:五十嵐月夜
  • 表紙: こぞう
  • 委託: メロンブックス とらのあな
  • 同時頒布: 『宇佐見蓮子は星が怖い』

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宇佐見蓮子は星が怖い

入手した情報を元に、メリーと共にオカルトの調査をすべく奈良県は三輪山にやってきた蓮子。
夜半に山に侵入することに成功した蓮子だったが、出くわした怪しげな猫を追いかけているうちにメリーとはぐれてしまう。
星と月から位置と時刻を割り出す力を頼りに、合流するべく夜空を見上げるが、猛烈な不快感――そして、まともに位置も時間も分からないという現実が彼女を襲う。
自分がどこにいるのか分からない。今がいつなのかさえ分からない。
星空の下ではあり得なかった感覚に混乱する蓮子は、延々と変わらない風景の続く三輪山を彷徨い、疲弊していく。
やがて朝を待ちわびるようになるも、彼女を待っていたのは太陽ではなく、さらに理解を超えた、祈りをも砕く現実だった。

ルーミアは闇が怖い

外来人を襲って欲しい――そんな依頼を受けた友人らに連れ出された闇の妖怪・ルーミアは、追い詰めた人間の消失と共に、闇の中で不気味なうめき声を耳にする。
聞き間違いか、気のせいか。不安を酒で忘れたその翌日、確かにそのうめき声はまた聞こえてくるのだった。
いずこから発されるかも分からない声。何者かに憑かれているのか。
這い上がってくる苛立ちと不安に耐えかねたルーミアは、敵であるはずの博麗の巫女に助けを求める。
だが、神社に着いた彼女に待っていたのは、巫女ですら分からないという事実と、声の主が言葉を操り始めたという現実。
闇に安寧を求める身でありながら、誰かの気配に満ちた闇に怯えるルーミアがその正体を知ったとき、理解不能な深淵からの来訪者が彼女を包み込む。

豊聡耳神子は聲が怖い

仙人である豊聡耳神子は、増えた弟子たちに自分の時間を削られながらも高みへ至るための修行の傍ら、復活した幻想郷で穏やかに暮らしていた。
ある朝、そんな神子の目を覚ましたのは自らの声もろくに聞こえぬ爆音だった。
すわ襲撃かと構えるも、廟の様子は普段と変わらない平穏そのもので、神子以外の住人は爆音などないように話しかけてくる。
変わっていたのは、自分だった……? この耳が、狂ってしまった……?
人々の声を聞くために与えられた聴覚の才。それが失われたという疑惑に至った神子はそれを隠してしまった見栄に屈して一人頑なに解決を目指す。
しかし、不器用に取り繕う神子にはまだ知る由もなかった。頭を揺らす爆音は始まりに過ぎないことを。己の変容と配下の不変の狭間には、人の埒外に蔓延る化物の呼び声が満ちているのだと。

ドレミー・スイートは夢が怖い

夢の支配者であるドレミー・スイート。
普段根城にしている遊園地のある夢の世界で目を覚ました彼女は、眠る前のことを思い出せないことに気づく。
不可解な事態を疑問に思いながら夢の中で過ごすドレミーだが、そこに夢ならではの怪現象の数々が襲いかかる。
異物を吐き出す、人殺しに失敗する――現実での問題を強く示唆するそれらの凶夢は、いつの間にかたどり着いていた夢の世界から脱出する決意を固めさせるには、十分不吉なものであった。
一つ、また一つと、妨害を掻い潜りながら、時には敗北しながら彼女は夢から覚めていく。
しかし、現実へと、覚醒を求める彼女は夢の中で気づきもしなかった。己を眠りへと誘う存在の、その真の狙いを。この事態の根底に眠る、抗いがたい破滅を。

東風谷早苗は神が怖い

十年前、別れを告げた故郷をふと思い出した早苗は、過去の決断を出汁に、帰郷をちらつかせる諏訪子になじられる。布団に逃げ込んだ早苗が目を覚ますと、そこは実家の寝室だった。
重い身体は、正しく二十七歳になり、風祝としての力を失った外界の早苗のもの。諏訪子の言葉通り、夢から覚めたように早苗は外に追い出されたのだった。
祟られ、不調に喘ぐ彼女は、見えないが『居る』諏訪子に畏れを抱く。
特別でない自分は、あまりに無力だ。身近な神は、こんなにも恐ろしい。
しかし、諏訪に覚えた違和感に、現実に存在する幻想郷への帰還を決意し、知己を頼るべく、早苗は一路東京へと向かう。
だが、己の求める故郷へ手を伸ばした早苗は知る由もなかった。幻想郷に、彼女の居場所はもうないことを。恐るべき神が、非力な彼女を待ち受けていることを。